中尾の棚田の概要
棚田面積 約6.1ha
棚田枚数 80枚
平均勾配 約1/5
水源 湧水(南アルプス)
法面構造 土羽
開発起源 不明
地域の概要
伊那市にある長谷中尾地区は、標高約850mの高地にある小さな集落で、周囲の山々や美和ダムを望む場所に位置しています。
この集落では、高齢化により営農活動が困難となって以降、多くの棚田が耕作放棄地となり、荒れていました。
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企業の参入
そんな中、輸出米事業を展開していた株式会社Wakka Japanが、「健康や栄養価等の付加価値を重視する海外の市場に特化したお米を作りたい」という思いの中、栽培に適した農地を探していたところ、自然豊かな長谷中尾地区が目に留まりました。
農薬や肥料を使わず、限りなく自然に近い形で栽培したいという希望に、農薬等で汚染されていない水の確保の面において、上流に耕作地のない中尾の棚田は理想の環境にありました。
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その後、地元関係者の協力を得て、日本初の輸出米専門の農業生産法人、株式会社Wakka Agri(ブランド名 the rice farm)を設立しました。
これを契機に、現在では集落の棚田をすべて借り受け、農薬等を一切使わない高付加価値な米の生産や加工品の製造・輸出に取り組んでいます。
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“米作り”から“まち作り”へ
株式会社Wakka Agriでは、「集落が廃れれば農業も廃れてゆく」との思いから、最近では米の生産のみならず、拠点となる古民家の改修や、近隣の小・中学生、一般の人々を対象とした農業体験イベントの開催など、集落を活性化させる取組にも力を入れています。
また、信州大学農学部と連携して、調査・研究を実施するともに、講義や実習を積極的に受け入れるなど、学習の場の提供にも取り組んでいます。
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棚田からの景観
棚田は南アルプスの麓に位置し、集落の民家とともにのどかな田園風景を形成しています。
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例年開催される「棚田まつり」では、棚田の周りが手作りの灯籠によりライトアップされ、普段では見れない幻想的な風景を醸し出しています。
令和4年3月には、美しい景観と、棚田特有の気候や地形を活かした米栽培の取組が評価され、全国各地の優良な棚田を選定する「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~」に認定されました。
棚田から生まれた商品
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中尾の棚田では、食に適した玄米「カミアカリ」の他、「しらけもち」や「ささしぐれ」といった品種が栽培されています。
しらけもちは切餅、パスタ等に加工される他、カミアカリは地元の酒造会社合資会社宮島酒店(伊那市)により「玄米甘酒」として醸造され、香ばしい香りと優しい甘みが特徴の人気商品となっています。
また、In a daze Brewing(イナデイズブルーイング)(伊那市)は、カミアカリの地ビール「HASE」を醸造しており、穀物の甘味や、すっきりした味わいが自慢の商品となっています。
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今後は海外向けの米作りを広げていくとともに、農作業体験イベント等を通じて長谷中尾地区の魅力を更に発信していきます。