山室の棚田の概要
棚田面積 約27ha
棚田枚数 238枚
平均勾配 約1/5~20
水源 河川(山室川・宮沢川)
法面構造 土羽
開発起源 不明
地域の概要
伊那市にある山室地区は、伊那市の東部に位置し、三峰(みぶ)川の支流である山室川に沿って連なる山室の棚田を有する中山間地域です。
本地区では、高齢化、担い手の減少、小区画・不整形な ほ場などの課題から、耕作放棄せざるを得ない農地を多く抱えていました。
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地元営農組織の立ち上げ
これらの課題を解決するため、地域一体となって農業農村を維持していこうと地元営農組織「農事組合法人山室」が平成17年に設立されました。
この組織では、農地貸借や市民農園(ふれあい農園)の開設、地元酒造会社と連携した地酒の商品化など、地域の資源を最大限に活用することで、地域の活性化に貢献しています。
また、獣害対策や水路管理を地域全体で担うことで、地域の雇用創出や、移住者が地域に溶け込みやすい環境づくりに繋がっています。
棚田からの景観
山から川に向け広がる、ほ場整備された広大な田が目を引きます。
この地域では、「消費者と生産者が互いに見える関係」の構築のため、棚田オーナー制度に取り組んでおり、田植え、稲刈りなどのイベントを通して、農村と都市住民との交流の場を提供しています。
令和4年3月には、美しい景観と地域の取組が評価され、全国各地の優良な棚田を選定する「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~」に認定されました。
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棚田から生まれた生産品
山室の棚田では酒米の栽培が盛んで、全体の約8割の田んぼで「ひとごこち」や「美山錦」、「山恵錦」などの酒米が生産されています。
株式会社仙醸(伊那市)は、平成17年から農事組合法人山室と栽培契約を結び、酒米「ひとごこち」を使用した辛口純米酒「やまむろ」を醸造しています。
このお酒は、「高遠産の米を使い、高遠の蔵元で醸し、高遠の酒屋だけで販売する地酒」として、高遠旨い酒研究会(高遠町限定の地酒を開発するため、平成15年に地元酒販店が立ち上げた組織)に加盟する4店舗で販売されています。
また、合資会社宮島酒店(伊那市)とは無農薬・減農薬の栽培契約を結び、酒米「美山錦」、「山恵錦」を使用した純米酒「超玄」、「一瓢」、「和三本」などを醸造・販売しています。
農事組合法人山室は、多様な主体と共に棚田を保全していくことを県内外に広く周知するため、令和6年2月8日に株式会社仙醸・高遠旨い酒研究会、令和6年4月23日に合資会社宮島酒店と、「棚田パートナーシップ協定」を締結しました。
今後も、山室の棚田は地域農業を更に発展させ、“美しい農村としてあり続ける地域づくり”を目指しています。